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9/28

お久しぶりです。  まくらです。
十日ぶりの日記と小説を載せました。

近々、ブログランキングにも入りたいと思っています。

やっとブログにも慣れてきました。
かなり楽しいですね。
これからもよろしくお願いしますね。

最近は東方などにハマっております。
では、また次の日記まで。


 


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テーマ : 日記
ジャンル : 日記

3

2/月夜の来客


誰かを斬り捨てるなら簡単だった。
誰かを受け入れることは困難だった。
全てはいつか見た幻。
心に痛みを知ったの日から、私はあなたに憧れた。
 いつか共に行けるなら、私が見てきた全てを見せたい。
大切なことを教えてくれたあなたへの私が出来る恩返し。
 それが叶わぬ夢ならば、私は叶え方を探す旅に出よう。
これからもあなたとともに歩んでいくために。










奴が起きていた。
いや、着いた途端に起きたほうが正しいか、一方的にひたすら話しているが、元気付けだけなら多分、奴の十八番(おはこ)だろう。今のうちに玄さんに経緯を説明する。
「そうか、大体分かった。用はあの子を泊めてほしいってことだろう」
さすが、玄さん。話がはやい。
「で、お前さんはどうするんだ。今日はどこも部屋余ってないぞ」
「えっ、マジっすか。んーじゃあ――」
そういうことなら仕方ない。
「此処の座敷で寝ます。あとで布団だけ貸してもらえますか」
浩平と女の子のところに戻る。
「おい、櫂。何が世ほどのことがない限り会えないだよ。俺が町で見かけた子ってこの子のことだぜ。運命の出会いってやつだ。ねっ、」
かなり困っているようにしか見えない。
「そんなことよりお前、もう帰る時間じゃないのか。彼女も今日は此処に泊まるし、話すなら明日でも良いだろう」
「マジ?じゃあもうそろそろ帰らないと。姉貴に殺されるとこだったんだ。あっ、そうだ。最後にまだ聞いてなかった。帰る前に名前だけ教えてよ」
「片瀬 由利(かたせゆり)です」
「由利ちゃんか。よーし、明日が楽しみだ。じゃあね。ご馳走さん」
開けっ放しの扉を閉めに行く。
うわ、やべっ、あいつスキップしながら帰ってる。

浩平がいなくなったところで本題に移る。
「ところで、片瀬さん。何で追われていたの?」
「それは―――私が研究対象の一人だから」
予想もしなかった言葉に思わず声が出た。研究対象?どういう意味だ。驚いている俺を彼女は気にせず話し続ける。
「この近くに高原病院という病院から脱走してきました」
「えーっと、高原病院ってあのやたらデカイ病院だよな。塀で囲まれているからどんなところか知らないけど、末期の精神患者とかがよくいれられているってきいたことあるけど。」
「脱走って、あの病院から逃げ出す必要があったのかい?」
急に横から玄さんが質問してきた。
「わっ、いきなり現れないでください。寿命縮まりますよ」
「悪い、悪い。で、どうなんだい?」
話が元に戻る。泊めてもらうのだから玄さんにも聞いてもらう必要があるのは当然だ。
「あの病院は表向きだけで実際は人体実験の施設です。精神病患者をいれているというのも万が一の保障に。精神障害だからっていったら誰も疑わないから・・・」
玄さんは思ったより驚いていない。普通いきなりこういうことを言われてもかなり返答に困るものだが。
「じゃあ、警察とかに言いにいったほうが良いんじゃないか?」
「いえ、戸籍がないんです。生まれた時からあの病院に引き取られていたので、本来ならいるはずのない人扱いになります。――だから、」
彼女が話していく度にブルーになっていく。軽く肘で玄さんをつつく。
「あっ、分かった。それなら仕方ないな。訳ありの子には深く追求しないのがうちだからな。疲れているだろうし、今日はゆっくり休みなさい。話はまた明日ということで」
喜美恵(きみえ)さんが奥から出てきた。ちなみに喜美恵さんは玄さんの奥さんである。
「布団の用意できましたよ。あなた、ちょっと話が。櫂君。後で布団持ってきてあげるからね」
「ありがとうございます」
そういうと玄さんを連れて奥へと入っていった。
「えっと、その、ありがとう。助けてくれて」
彼女がさっきとは違う感じだ。これはもしや、なんてことはないがなぜか遠慮気味である。なんだかかなり照れくさいが、
「うん、気にしないで。あっ、自己紹介が遅れたけど、俺は白峰 櫂(しらみねかい)。好きに呼んでくれていいよ。これからよろしく」
「あたしは片瀬 由利です。こちらこそよろしくお願いします」
改めて自己紹介したあと、お互いに少し沈黙する。
気が付けば勝手に手が出ていた。今の雰囲気も関係なく、流れる涙をそっと拭うために、嬉し涙を流す彼女は、今日始めて、俺に笑顔を見せてくれた。

「良いよね~。若いって」
「そうね。昔の私達みたい」
なぜか奥に行っていたはずの玄さんと喜美恵さんがこっそり顔を出してこっちを見ている。
「何をやってるんですか。二人とも」
やっぱり見られているとなるとかなり恥ずかしい。
「皆さん本当にありがとうございます。今日はお世話になります。じゃあ、おやすみなさい」
「えー、もう少し話せば良いのに」
喜美恵さんが残念そうに引き下がっていく。
「じゃあ、また明日な。おやすみ」
「おやすみなさい。櫂さん」
その夜、まぁ、冷え込んでいたというのもあったが、一睡も出来なかったのは言うまでもなかった。

「なぜだぁ。なぜいないんだ」
 竹中 浩平は叫んでいた。
驚きが隠せなかった、というよりは落胆していたといったほうが良いかもしれない。彼にしては珍しいまでに早起きだったし、朝の九時にこの「玉蜀黍」の前に到着していること自体奇跡に近かった。そう、今日いう日が人生において最大の転機になるはずだったのだから。
「なぜだ。まさか、親が来て帰ったとか。いや、もしかして俺に取られまいと、櫂が連れて行った。くそぉ、あの野郎。さては嫌がる彼女を無理やり。しかし、あの櫂がそんな大胆なことが出来るわけないし、じゃあどこにいった。あぁ、玄さん。起きてたんだ。玄さんってば、昨日の彼女は、どこにいるんですか。ねぇ、玄さんってば!」
朝から近所迷惑な上に、起こされて戸を開けたらこれだ。起きたばっかりの彼が知るはずもない。
「日曜の朝から家の前で叫ばないでくれる。そんなの知らないよ。あぁ、喜美恵が書置きで、由利ちゃんと櫂君を連れて買い物行きますって書いているわ」
「そんなー。うそだろ。こんなのあんまりだー」
「そんなこといわれてもな」
もはや彼の愚痴で日曜が潰されようとは彼には知る由もなかった。玄さんは仕方なく、悩める青年を店に招き入れた。

テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

2

俺が夜中に徘徊するのはうちが放任主義ってわけじゃない。単に少し居づらくて、家にいるのが嫌いだから抜け出しているだけだ。簡単に言えば、夜中限定のプチ家出みたいなもの。
家は新しい武術の家系で、流派は白峰(しらみね)流剣術といって主に小刀を使う。説明したら結構長いので詳しい話は置いといて、長男がほぼ後継者に決定という状況なので、次男である俺は正直言ってあまり必要ない。二年前までは兄と妹と一緒にいろいろと訓練させられたが、兄の前ではまったく相手にされず、妹の前では情けない兄としてしか見られていなかったと思う。だから、もう辞めてしまった。というより問題を起こしたので責任をとる感じで辞めたと言った方が正しい。剣術をしない俺なんて役に立たない。つまり俺の居場所は家にないということだ。おやじも「警察に世話になるようなことになるな」というだけで必要なとき以外は俺を呼ぶことも会話もあまりしない。二つ違いの妹は高校受験のため部屋に籠りぎみである。それでも剣術を続けているのだからたいしたものだと思う。マジで。
そう、夜中に家にいても話し相手も暇つぶしの道具もない。おやじは俺単体に対しての愚痴ばかり。兄は日々の鍛錬が恋人みたいなもの。だから邪魔する訳にはいかない。でも実際ももてるのだから羨ましい限りである。妹はもちろん受験勉強。母はいつも俺の話し相手になってくれて優しく接してくれたが、去年、肺がんで他界した。煙草の吸い過ぎもあったのだろう。
一番の理解者もいなくなった今、こうして深夜徘徊する俺に到る。

      

やっと橋を渡りきろうとしている。
「あぁ、くそ。眠い。浩平の奴、つまらない話が長いんだよ。もうこんな時間じゃねぇか」
腕時計に目をやる。時刻はもう三時を回ろうとしている。ふと目を正面に戻すと道端に倒れた人一人。息はしているし、特に異常はない。それが酔っ払いの男なら道の端っこにでも放置していただろう。
ただかわいくて同い年くらいの女の子ならどうする?
声をかけるのが、男として当然の義務ではないのだろうか。
「大丈夫?どこか具合が悪いなら・・・」
話しかけた矢先、急に彼女が話してきた。
「お願い。逃げて」
「えっ?」
彼女の後ろからバスッという音がした。衝撃とともに後ろにとばされる。何があったのか、一瞬理解出来ないまま俺は・・・。


 あの研究所を逃げ出してから一日しか経っていない。どうしてこうなったんだろう。脱出までは完璧だった。もう大丈夫だと思っていたのに、追跡用の発信機の可能性も考えて、服を着替えて確認した。四個も出てきたからもうないだろうと安心していたのが悪かったんだ。まさか体内にあるとは思いもしなかった。無理やり斬って出した傷が痛む。でも、遅かった。
「あー、もう最悪。何でまた追いかけられなくちゃいけないのよ」
後ろから黒いロングコートを着込んだ男が二人。仕事を忠実に果たそうと私を追いかけている。
追いかけられてもう二十分。やっと橋が見えてきた。橋の手前に着いて来た時、後ろを振り返って確認する。かなり距離が縮まっていて急ごうと足を速め、前を向いたときだった。
二発の銃声。一発は辛うじて避けた。だが、二発目は的確に足に命中。
「くっ」
勢いのまま倒れ込む。
周りには街灯はなく、辺り一面真っ暗闇。
相手は暗視ゴーグルを着用し、銃はレーザーサイト付き。
どうせなら出て来るときに暗視ゴーグルくらいパクって来るんだった。
後ろから足音が聞こえる。
捕まるくらいなら、死んだほうがマシだった。
最後の抵抗。小声で最後の詠唱を唱え始める。
「幻視の盾、破断の剣(つるぎ)。振り翳すは孤高の騎士。その身を天に、魂は地に――」
敵の足音が速まる。前からも足音が聞こえる。前から?前には誰もいないはずどうして前から足音が?
「――此処に己が敵を断ち切らん。我が命に従いその力を示せ・・・」
術式は唱えた。かなり省略したが、一応、探知式の迎撃魔術。
次に撃たれたとしても自動的に防御魔術が発動。それに伴い迎撃魔術が発動する仕組みになっている。
欠点は対個人用魔術となってしまったこと。それに対し、相手は二人。残りの魔力を撃たれた足の回復にまわし、一人を迎撃した後、術式を組み直し、逃走。
明らかに不利だが、今の私にできる最良の方法がこれしかない。ここに来るまででもかなりの魔力を消費した。
これが最後か、運がよければ・・・。
後ろから来る相手は見れないと言うよりか振り返れない。分かるのはどんどん近づいて来ているということだけ。足音が大きくなる。後ろからそして前からも?
本来なら誰もいるはずのない時間帯。増援の可能性も捨てきれないが、もしそれ以外の誰かがいたら、確実に巻き込まれる。
前からのほうが速い。
「君、大丈夫?どこか具合が悪いなら・・・」
しまった。見るからに紛れもなく一般人。このままだと間違えなく殺される。
「お願い。逃げて」
「えっ?」
突然、背後から銃声が鳴り響いた。私の反応に一瞬、彼が固まった直後の発砲。
容赦ない銃撃の嵐。倒れこむ男の子。
「うそ、そんな――あなたたち正気なの。一般人を撃つなんて」
追われているということよりも今は彼らが憎くて仕方がない。
彼は無抵抗だった。いくら私を捕まえるためとはいえ、殺すまでしなくてもいいだろう。それも威嚇でなく、心臓に狙いをつけて撃つなんてもってのほかだ。同い年くらいの男の人。追われていなかったら、今頃、初めての友達になってくれていたかもしれない。
それなのに・・・。
「対象が国家機密レベルのため、君に近づいた者。または、君の存在を確認した者は始末しろと高原から言われている。そろそろ大人しくして貰おうか、お嬢さん」
彼らは一定距離をとって近づこうとしない。私が布いた魔術の存在をすでに気付いている。いや、連絡を取っている様子からおそらく私の戦闘パターンが事前に伝えられていたみたいだ。
「どうしてこんなことになっちゃったのよ」
此処まで来て捕まるという悔しさと一般人を巻き込んでしまった後悔が一気に押し寄せてくる。感情が制御しきれず、涙が止まらない。
止めどなく流れる涙が落ちる。自分の前には巻き込んでしまった男の子が倒れている。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい」
何度謝っても、謝っても、意味がないことは分かっていた。それでも今の私には謝ることしかできなかったのだ。
私はただ知りたかっただけ、夢にまで見た本物の世界を。
私は触れたかったのだ。感じたことのない本当の温もりを。
それなのに、この憧れていた世界に来て、初めて出逢った人がもうすぐ死んでしまう。彼女は泣き続けた。今まで感じたことのない気持ちを抑えきれず、ただひたすらに泣き続けた。
そう、彼はこのまま死んで、私は研究所に戻される。そしてまた同じ毎日。巻き戻しては繰り返されるような日々に・・・そうなるはずだった。
「もう泣かなくて良いよ。俺は大丈夫だから」
「えっ」
いきなり聞こえてきたその言葉に、彼女も黒服の二人も驚きを隠せない。撃たれた青年は何事も無かったかのように平然と隣に立っていた。
「なっ、どうして生きている。貴様、心臓を撃ったんだぞ。それなのになぜ、平然と立っている?」
そう彼は確実に急所を撃たれたのである。その瞬間を二人は目撃している。すぐそばにいた彼女もそう見えていた。しかし、傷を負っているのを左腕である。しかもそれ自体、かすり傷程度のもの。
「おまえ、どうやって――」
「どうでもいいだろう。そんなこと。こうして現に生きているんだ。それが幽霊や化け物なんて言い出すなよ。まぁ、お取り込みのところ悪いが、アンタら。少し黙っていろ」
彼が最後の言葉を言い切るまでに撃ったほうの男の懐に入り込む。下から顎に突き上げるような掌打。体は仰け反りながら宙を舞い、落下して倒れこんだまま起き上がることはなかった。
「くっ、」
もう一人の男が慌てて銃を引き抜こうとするが肘を止められ、鳩尾に一発。ひざをついたところをさらにもう一発くらって、倒れこんだ。   
「泣かないで、もう終わったから」
優しい台詞。彼の柔らかい口調は聞いているだけで自然と感情が落ち着いてくる。そう、さっきまでの私の逃走劇はこの青年によって一瞬のうちに幕を閉じたのだ。
不安は一瞬にして消えたが、それでも涙が止まらない。でも、この涙は先ほどとはまったく別のものだと思った。

かける言葉がなかった。
というよりどうしたらいいか分からなかったと言ったほうがはやい。泣かないでといってもなかなか泣き止んでくれないのだ。このまま家に帰れるわけもなく、ほっておくわけにもいかない。今日は帰れそうにないみたいだ。
唯一、俺の深夜徘徊を知っている妹に一応メールを送る。
朝方には、帰りますっと。
明日、怒られるな、きっと。
仕方ない。行く当てもないし、また、店に戻るか。浩平も酔いつぶれて寝ているだろう。
「そこに行きつけの店があるんだけど、ひとまずそこまで行かない?此処だと冷えるし」
素直に頷く。けど、玄さんにどう説明しよう。少し考えた結果。出た答えは、
「まぁ、適当(アドリブ)でいいかな」
彼女を連れて、来た道をまた引き返す。危険な状況下で結ばれた二人は長続きしないと言っていた映画があったけど、この場合どうなんだろう。彼女いない歴十六年の俺にとって、この突然の出来事はある意味きっかけとも考えたが、やはり厄介事が来るのではという不安で頭を抱えつつ、俺は再び「玉蜀黍」に向かった。



テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

買っちゃいました♪

買っちゃった!



いきなりですいません。

空の境界 「未来福音」が出たものでつい、テンションが高くなっています。
武内さんの漫画と奈須さんの小説、完成度はすごいです。

良ければ是非読んでみて頂きたいと思います。

うちのブログも載せ始めたのでよろしくお願いしますね。

テーマ : ブログはじめました!
ジャンル : 日記

逆さまの世界

逆さまの世界

                                                    白雲 まくら







出会い。それは必然であったり偶然であったりとさまざまだが決して定められたものではない。生まれたときにはじめて光というものに出会う。そして人や物やそれ以外の何かに出会いながら、人は生きていく。そう、人生とは出会ってきたものに左右されて決まる。自分の運命は自分で決めるといった例えは非常に良い。確かにその通りだ。
付き合う人が悪ければ、それだけ悪い方向へと自分を追い込んでいく。物に執着を持てばひたすら追い求めることを止めない。自分自身と出会うなんて死ぬ直前の話だ。最終的にどんな自分になったか。それが本当の自分に出会うということ。だから死ぬまでは他の奴に左右され続けて生きるのが落ち。
人生なんてそんなものだろう。







1/静寂の出会い

どこを見渡してもあたり一面の白。たぶん嫌いな色は、と聞かれたら、まちがなく「白色です」と答えるだろう。この部屋いや、この牢屋には私を満たすものなどなにもない。人生のうち十六年間もここで無駄にしてしまった。
手を伸ばしても何も掴めない。いつもと同じ変わらない殺風景。
「何をしている?」
ほら、今日も時間通りに研究者の群れが取り囲む。
「――別に何もしていませんが、」
「ふん、相変わらず愛想のない返事だな」
ほぼ毎日こんなふうに様子見しにくるが、最近はかなりマシになったほうだと思う。ここは高原(たかはら)の作った檻。世間では高原病院と呼ばれている。呼び方だけで意味も変わってというのはこういうことなのだろう。同じ人間を取り扱うとはいえ扱いが違いすぎるが・・・。


でも、まぁいっか。今はなんやかんや言って出られたんだしね。
「――外ってこんなに広いんだ」
予想はしていたけど自分の目で見るとここまで違うと思わなかった。今夜は満月だ。月明かりがすごくきれい。

月のスポットライトを浴びながら夜道を歩く姿は、まるで、バレエの初舞台に出る少女のみたいであった。
初めて見る世界、それでも軽快なステップで踊るその動きはまさに好奇心から生まれたものそのものであった。

「さあ、楽しみますか。第二の人生を」


十二月十一日になって、二十分経つ。もうすぐ目的の橋に着く。そこまで着いたら、行きつけの店はすぐそこだ。なぜこんな深夜に開いているかって?
それは此処のマスターがかなりの夜行性だからである。
朝から昼まではたいてい睡眠時間。夕方までに仕入れを済ませ七時より営業。深夜三時までやっている。そう、何を隠そうこの店は不良少年達には憩いの場である。あと自棄になったおっさん達もだけど。

やっと橋に到着。此処まで来れば店は目前だ。ほらもう看板が見えている。
居酒屋「玉蜀黍(とうもろこし)」。店長の奥さんが付けたらしく、こっそり理由を聞くと、玄さんの髪が玉蜀黍の毛みたいだからだそうだ。つまり髪は少ないが残った髪は長いということ。いつも帽子をかぶっているのはそのせいだろう。あまり追求しないであげよう。

中は結構混んでいるみたいだ。二階建てで上は泊まれる余裕があるほどだが縦長のつくりなので、大人数の宴会にはむいてない。
お悩み多いことご苦労様。今日はサラリーマンの方々が大半を占めている。席がほとんど開いていない。仕方なくカウンターへ行こうとした矢先、お誘いの一声。
「おぉ、櫂(かい)じゃねえか。コッチこいよ」
此処に通うようになってから知り合った、名前は竹中浩平(たけなかこうへい)。
同い年だが浪人生で気分転換にと言って来ている常連客。それにしても週三のペースで来るというのはどうかと思うけど。
「なぁ、この前さぁ、町でむちゃカワイイ子見つけたんだけど」
「どうせ、いつものことだろ。あぁ、すいません。揚げだし豆腐と軟骨のから揚げ一つ。以上で」
「いや、いつもとは違うね。あれは今まで見た中でも極上モンだった」
何を根拠に女性を区別しているのかさっぱり分からないが。
「でも、町で見かけたんだろ。よほどのことがない限り会うことなんてないんじゃないか」
「それを言っちゃおしまいよ。相棒。この十六年間、俺達はずっと彼女という存在がいない。そろそろ少しぐらい夢ぐらいもって生きようや」

しばらくして軟骨がきた。相変わらずこの店は品を出すのが速い。しかもうまいときているのだから来るのを止められない。食べながらも続きを聞いてやる。
「いや、出会ったのもここ最近だから。それにお前のは単なる妄想だろ。ていうか何でそんなこと知ってんだよ」
「ふん。貴様からは俺と同じにおいがする。ただそれだけのこと」
かっこつけたつもりなのか?本人は自慢げに自分の妄想癖を語り始めた。まあいい。揚げだし豆腐がきた。今は食べよう。続きはその後に聞いてやるとでもするか。
「やぁ、櫂君。混んでいるだろう。なんせチームで成功したらしく今日は全員飲みやがれ、だと言う集団でさ。一時的に貸し切り状態まで追い込まれたぐらいだ」
疲れたと隣に座り込む店長。
「抜けて大丈夫なんですか。玄さん」
「おうよ。みな酔いつぶれて注文がこねぇからな」
店長の玄さん。本名は兎山玄(とやまげん)。
俺らと同じ歳の頃には何度も警察にお世話になっていたらしい。今でもかなり若者(不良)の中で有名ならしく隻倉(せきくら)市一の不良も頭が上がらないようだ。夜に暴走するくらいならうちに来いと言ったらたくさん来るものだから、儲けはすごく良いと教えてくれた。いったい若い頃どんな悪さしていたか気になる。すごく。

いろいろ話しているうちに時刻は二時半過ぎになっていた。
「浩平。俺、そろそろ帰るわ。玄さん。また来ます」
「おう。いつでもきやがれ」
「分かった。俺はもう少し飲んでくから。じゃあ、なっと」
酔っているな。浩平の奴。
「ご馳走様でした」
結構外は冷え込んでいる。外はまだ暗いままだ。
右のポケットからウォークマンを取り出す。
夜、誰もいない町で音楽を聴きながら歩くととても気分がいい。雑音はほとんど聞こえない。誰でも一回やってみたら良いと思う。

テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

白雲まくら

Author:白雲まくら
会社員となり、日々ストレスとの戦い。
また、睡魔を相手に日々戦っております。






著作権に関しては、無断転載・無断転用についてはご遠慮ください。 


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