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そこまで時間は繋らなかった。走りながら早紀にも連絡を入れておいたが、「残念ですけど、私も帰りが遅くなりそうです」と返信がきた後は音信不通のままである。
「くそっ、こんなときに何をやってんだよ、あいつは」
繋がらない携帯に悪態を言いつつも着いてしまったともなれば、最早どうでもいい。ここまでこんな短時間で来れたのも、おそらくは彼女の魔術とやらのおかげだろう。前に一度だけ見せてもらったことがある。
「私、魔術が使えるんです」
そういって彼女は教えてくれた。彼女の世界のことを。

多色多様の炎や川を一部凍らせてみたりと、それはまるで科学にも手品にも似つかない一種の神秘。
「早紀ちゃんとかに追われるような事とかがあれば、姿を隠せる魔術もあるので必要だったら言ってくださいね」
「ありがとう。是非、そうさせてもらうよ。ところで、魔術って魔法と何が違うの?」
「魔術は学問のようなものですから、鍛錬を積めば誰でもできる可能性があるんです。また、等価交換と言えば説明も付くんですけど、魔法はその最終地点。不可能を可能にする奇跡と言ったらいいでしょうか。私の魔術はどちらかと言えば、召喚魔術に近いかもしれません。俗に使い魔って言われているものです。使えるのは七十種類。使い魔本体は出てこないからどちらかといえば微妙なんですけどね。少しですけど、分かって貰えましたか?」
「あー、なんとなくなら分かるかな」
頬を掻きながら、考える俺を見てクスッと笑う。
「仕方ないだろう。魔術すら初めてで今でも信じられないくらいなんだ。」
「そんなものですよ。本来なら交わることのない世界の話。いきなり信じろって言うほうが、無理ですから。そう考えれば、私たちが出会ったのも、偶然や奇跡の類だったんでしょうね」
「いや、必然だったんじゃないかな?きっと」
ふと、反射的にでた言葉。自分でもなぜ口にしたのかすら分からなかった。だが、それでも不思議と恥ずかしさはない。
純粋な気持ち。
ただ、こんな日々が楽しかった。それだけのこと。
彼女は少し驚いた顔で、でもすぐに笑顔に戻る。
「確かに、逆に決まっていたのかもしれませんね」

変わらない日常。あの日のような楽しい毎日を過ごせるなら他に何もいらなかった。たとえ、自分を犠牲にしてでも護りたい日々だから・・・。


目の前に広がるは、荒れ果てた乗換え口。
全ての駅の中間でもあることからその大きさはかなりのものだったが、今となってはそんなイメージすら浮かばない。中央に立っていたいつも六時に決まってなる柱時計も折れている。晴れた日にはいつも、眩い陽射しをくれたガラス張りの天井も突き出たバラに光を遮られ、虚しくも破れている。
「くそっ」
想像したくなかった場面。
日常の崩壊。目の前の現実。
「おや、どうして人が立っているんだろうね?」
誰も立っていないはずなのに声の主は折れた時計台にもたれ、こっちを見ている。その横には見覚えのある人が・・・。
「片瀬さん!」
天井から伸びた二本の茨は彼女を吊るし、自由を剥奪している。
「そうか、通りで手応えがないわけだ。指南書の容量を考えないから、感謝するよ、少年。お陰で簡単に#5を捕まえることができた」
「黙れよ」
見知らぬ男がそこにいたことも、そいつが意味のわからないことを言っていることも関係なく、ただ感情だけが昂っていた。
気にくわない。#5だと?彼女には片瀬由利という名前がある。それを人じゃないみたいに。
言葉は届かず、男はなおも話し続ける。
「少しくらい話は聞いているだろう?僕は#6、香田(こうだ) 芳明(よしあき)。なぜ、こんな女よりも下の扱いなのかと思うと気にくわないのだがね」
「いいから少し黙れよ」
うっとうしい。目の前の男も周りで蠢くバラも。
「彼女の結界で逃げておけばよかったものを。高原に言われているんだ。君、白峰って奴だろう?出来れば一緒に連れてこいってさ」
抑えきれない感情。目の前の奴の言葉なんか耳障りで仕方ない。
「黙れ」
「何か言ったかい?命乞いくらいなら聞いてあげるよ。いや違うか、このパーティを気に入ってくれたとかかな?」
黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ、黙れ!
もう何も聞きたくない。
「いいからお前は黙ってろ!」
叫んだ途端に胸に熱さが走る。手で押さえつけるとその感触は水。生暖かさを残したそれは止め処なく溢れ出る。茨は何十にも重なり、槍のような形状をして胸を貫いていた。
「いいかい、僕は自分の会話の邪魔をされるのが嫌いなんだ。ここでの主導権は全部、僕にある。生かしては帰るつもりだけど。さっきの言い方はどうも気にくわない。訂正して貰おうか」
崩れ落ちていく体。全身の力が入らない。

馬鹿みたいだ。
助ける?誰を助けられるというのか。
叫ぶだけ叫んで、何も出来ないままこうして胸に孔あけられて終わろうとしている。
ここに来る前に決めた誓いは一体どこへ行った?
ここまで来て終わりなのか?
じゃあ、何のためにここまで来た?
彼女を救うために、変わらない日常を取り戻すために来たんじゃないのか。
そうだ。それなのにこんなところで倒れて・・・・。

薄れていく意識の中、頭の中で反響し続ける過去の記憶。
人間死ぬ間際にそういった回想することが出来るって聞いた事ある。それが幸せなものだったら、まどろみに身を任せたかも知れない。ただ、反対だったら気分悪く起きてしまうだろうが。

〝そんなことだからいつまで経っても誰も助けられんのだ〟

うるせぇよ。くそ親父。こんな時まで説教してんじゃねぇ。立てばいいんだろう。目の前の奴を殺せば、もう、夢に出てこないなら、全てを取り戻せるなら、望み通り殺してやるよ。

香田の声も掻き消すほど大きな辺りに笑い声が響き渡る。
「あ、はははっ、ハハハハハハハハハハハハッ!」
あぁ苦しい。苦しくて仕方ない。節々が痛む。血は喉を乾かす。全身から悲鳴が上がり、苦痛からの解放を訴える。なのにそれがどうしてこんなにも気持ちがいいのだろう。
突き刺さった茨を握る。触れた場所から灰の様に黒く変色し、粉となって落ちていく。
「何がおかしい?」
「主導権が誰にあるって?笑わせる。アンタ、可笑しくて仕方がないな」
「なっ」
返された答えは挑発。
「図に乗るな、お前ごときが主導権なんて、俺に喧嘩を売った時点でないんだよ」
話を遮られるばかりか、侮辱された怒りは止まることはない。
「もういい、貴様なんて殺してやる!」
少年は笑う。無邪気な子供の様に楽しく、鬼の様に残酷に。
「いいぜ、あんたの存在意義、俺が消してやるよ」
自己の否定。存在の拒絶。
それは破滅へのロンド。
そこから始まるは死の狂宴。




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テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

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No title

明けましておめでとう!
1から5までと、11から14を読みました。
最初の方は登場人物が少なかったから誰が何を話しているかわかったけど、4、5話くらいからかな?
誰の台詞かわかりにくい箇所があると思った。
でも、ストーリは恋愛の構図とかよく出来ていると思う。下手に台詞ばかりになっていないから描写が上手いのだと思います。
少し遅れましたが、今年もよろしくお願いします!
ではまた!

Re: No title

感想ありがとう!
徐々に読みやすい作品を作るよう努力します。
恋愛の方面はどんどん攻めていくぞー。
プロフィール

白雲まくら

Author:白雲まくら
会社員となり、日々ストレスとの戦い。
また、睡魔を相手に日々戦っております。






著作権に関しては、無断転載・無断転用についてはご遠慮ください。 


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