スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

16

「くそっ、何だよ。それ、そんなの見たことない」
黒い灰があたり一面を覆う。それは蠢いていた物の残骸。
緑は黒に。
突き出したその手は迫り来るすべての害が突き抜けることを許さず、無に還す。
「全力がそんなものか?」
決して魔力をセーブしている訳ではない。
どの力配分でもアレを突き抜けることが出来ないのだ。
相手も魔術を使えるなんて聞いていない。
そもそもあれは魔術なのか?
どの原則にも反する。該当するものがない。
なら、時間をかけるのは尚更危険だ。
何か分からない以上、早くけりをつける。
詠唱を唱え始める。
繰り出すは必殺必中。回避不可の切り札。
「軍は消えよ、来るならば、己が生を換えて挑め。汝が挑むは必中の魔槍――」
殺せなくても動きを封じるなら問題はない。直に#10もここに着く筈なのだから。
「――故に四方に逃げ場は無く、その身を以て的となれ」
櫂の四方から今までとは比にならないほどの巨大な槍が姿を現す。
「神殺しの魔槍(グングニル)」
貫くというより潰す。
標的にめがけて迫るそれはその名の通り、辺り一面を一掃した。

燃えているのか?
いや、違う。あれは俺の・・・。
槍は灰となって辺り一面に降り注ぐ。確かに潰した。周囲は陥没し、変形した床が必殺を証明している。
なのに何故まだ立っているんだ?こいつは。
「ははっ、何だよ貴様。そっちの方が十分化け物じゃないか」
駄目だ、俺一人じゃこんな奴の相手を続けるなんてできない。そうだ、#10はどうした?予定ならもうとっくに時間だ。ここで合流し、占拠するのが今回の目的なはず。なら・・・。
乗り換え口に目をやる。そこには一人、人影があった。
「誰だよ・・・。貴様は?あいつは、#10はどこだ!」
しくじったのか、奴が?いや、取り溢しかもしれない。なんせ、電車を占拠となればかなりの人だ。隙を見つけて逃げ出しただけだろう。
「遅かったじゃないか、早紀」
「えっ?」
どちらが先に言ったかすら分からない。
早紀にとってはここに兄がいること。
そして香田にとっては敵の関係者であることにただ驚きの声を上げるしかなかった。
これが偶然でなければ奴はしくじったことになる。
なら、この状況をどうやって打破しろというのか?
「どこ向いてんだあんた?よそ見する余裕なんてないだろう」
振り向いたそこには無垢な笑みを浮かべた少年が高々と刀と掲げている。
何のためにかは分からない。ただ、本能が語っていた。
“何があっても自分の身を守ることだけに専念しろ”と。
だが、両者の間に壁を作る間もなく、振り上げられた刀だけが放たれる。
驚きは隠せない。敵前で持っている武器を投げるなど誰が考えようか。それが飛び道具の類であるならまだしも、近接でしか威力を発揮しない得物を。
咄嗟に庇った左手に突き刺さる。狙いは的確に心臓を目掛けて放たれていた。だが、武器さえ奪えば戦況は変わる。
そう、これで主導権は変わったものだと思っていた。
それでも櫂は変わらず余裕と笑みを浮かべている。
何だってそこまで平然といられる?
何がこの私に恐怖を与える?
武器を奪ったのにどうして悪寒が消えない?
「あぁ、分かっている。飢えているのだろう?なら――」
誰に向かって話しているか分からない。だが、恰もそこに生き物が存在するかの様にこちらに話しかけてくる。
「――好きなだけそいつの血を喰い尽せ!」
その一言が発動の証。待てとくらっていた猛犬に許可するように言い放った直後、左腕は一瞬にしてドライフラワーのように乾き、ただの枯れた枝のように細く惨めなものと成り下がった。
中からごっそりと奪われ、外から押し潰されるような感覚。
「はっ、何だよ。これ?俺の腕が、う、でが・・・」
最早、自分ですら何を言っているのか理解できていない。
状況を整理できず混乱だけが渦巻く。
「血、抜かれすぎて判断が間に合わないのか?」
目の前には櫂が立っている。そう、こちらに向けて走ってきた訳でもなく、ただゆっくりの目の前まで歩いて。
今こうして目の前に敵が立ち尽くしている。
今までそんなことにすら気付かないほど放心状態だったのか?
「まぁ、どうでも良いけど返してもらう。それは俺のだ」
刺さった閃楽を抜くと同時に蹴りあげる。距離を置くためではなく、ただ抜きやすくするために。
「くっ、は」
抜かれた割に余り痛みを感じない。感覚はなく、枯れた腕は上がらない。
だが、それも腕だけだ。
まだ足は動かせる。走るだけの体力はある。
一目散に走りだしたのはおそらくこの状況下において最善の行為であった。
だが、それでも埋められないものもある。
距離が徐々に放されていく。それでも攻撃は届く。
切り傷が増えていくのはなぜだ?わずかでも距離は開いてきている。なのに・・・。
振り返り、向いた視線の先には紅い刀身。
彼の手元には元の小刀に付け足されて出来た真っ赤な血のような色をして、ルビーのように透明な刀があった。
「真名(しんめい)――――、紅灯閃楽(こうとうせんらく)」
血を吸い、刀身に追加する。これが本当の閃楽の姿。
吸われた香田の血によって作られた刀身は振り向いた自身に牙をむく。
その刀を見たのも一瞬のこと。
横一線に放たれた斬撃は彼の存在そのものを断ち切った。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

白雲まくら

Author:白雲まくら
会社員となり、日々ストレスとの戦い。
また、睡魔を相手に日々戦っております。






著作権に関しては、無断転載・無断転用についてはご遠慮ください。 


FC2カウンター
つい言ったー。
最新記事
最新コメント
リンク
カテゴリ
フリーエリア
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム
RSSリンクの表示
FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

月別アーカイブ
最新トラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。