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見つけたもの

あぁ、なんてくだらないのだろう。
この世界は腐りきっている。
とはいっても今の世の中ではない。
自分自身が空っぽだから何にも左右されず、共感も出来ない。
そんな自分の世界が腐っていたのだ。

空一面の青。
今日は久々の快晴だ。
大学も休校で丸々一日暇を持て余している。だからといって誰かと戯れるつもりもない。
「これで七人目か・・・」
市を分担する津田橋の下にある公園、空いているベンチでいつもの様にノーパソを広げながら、最近頻繁に続いているバットでの通り魔の事件報道の記事読む。
被害者との関連性は全くなく、要は手当たり次第というところだろう。犯行現場にスプレーで楽園の林檎と大きく描かれており、目撃者は肩に林檎の入れ墨をしていたとのこと。
まぁ、いつまでも捕まえる事が出来ない警察に対しての皮肉と俺に触れたら後悔すると自身を神聖化でもしているどっかの馬鹿だろう。

やはり、今日もこれといったものはない。政治や社会、流行などに自分が動かされる訳も無く、それでも他人に頼ることが出来ないままの毎日。いちゃついているカップルも五、六人でボール遊びしているガキどもを見ても、他人といて何がいいのか分からない。
こんなことを言っているが、自分が嫌われているわけではないし、逆に寄ってくる奴もいるくらいだ。
そう、単に坂上一成という人物は人という存在を理解出来ないのだ。
誰かを愛し、大切な人と共にいる。それは家族でも恋人でも言えること。
だが、彼は七歳の時点でそれを無くした。両親の事故死は本来受けるはずだった愛情も何もかもを奪った。
だから中身は空っぽ。
簡単に言うと例えば仲間が暴力を受けていたとする。それがたとえどうなろうと助けたいなどと感情的にもなれないだろうし、ただそういったことがあったと処理されるだけ。また、そのまま亡くなってしまったとして、そこで泣いたり、悲しんだりといったことが出来ないのだ。
だってそういった悲しみをいう感情はあの日自分自身からごっそりと引き抜かれたのだから・・・。
だから他人とは関わりたくはないのだ。
それ以来、極力自分から人を避け、こうしてくだらない生活を続けている。
一つの例外を除いては・・・。
「またパソコンばっかり見て、オタクと勘違いされるよ」
どうしてこいつはいつも俺に付き纏うのか。
「おまえはストーカーかよ。で、何の用だ。水前寺」
「せっかくの休みだしね。インドアな君を少しでも外に出そうと思って」
「じゃあ帰れ、生憎お前に奢るつもりもないし、金もない。それに歩くのは嫌いだ」
ムッ、と膨れるハリセンボン。
水前寺晶穂。頭を除いては才色兼備。ファンクラブもあり、抗争があると噂されているくらい校内で有名人のくせになぜか俺に寄ってくる。正直早く追い返さないと他の奴がウザい。
「何?例の通り魔じゃない。またやったんだ。それも結構ここから近いし」
「勝手に覗くな、まだ何かあるのかよ」
鞄から派手な黄色の財布が登場。
「だから言っているでしょう。外に出そうって。奢りでも来ないなら良いけどねぇ」
札束を見せびらかしながら笑みを浮かべるこの女が憎い。
くそ、このブルジョア野郎が・・・。

「ねぇ、時間割見せてよ」
「ノートは貸さないからな」
四皿目達成。
「えぇ、せっかく奢っているのに?」
「これとそれとは別だ」
五皿目突入。
「明日から腕組んで歩いてあげても?」
「やめろ、気持ち悪い。全力で断る」
札束に釣られたからにはそれ相当のお返しをしなければならない。なら、少しだけ頂くというのはやはり失礼に値するのだろう。

「すいません。会計お願いします」
五皿という自己新記録を達成した今、ここに用はない。
「えっ、ちょっと私まだ食べてるって」
「じゃあ、ゆっくり食ってろ。御馳走さん」
魂の抜けた亡霊がつぶやく。
「明日、大城君に言いつけるよ」
くそっ、またかよ。
手に取った携帯を慌てて取り上げる。二つ目登場。
「待て待て、分かった。ノートでもなんでも貸してやるから黙ってろ。アイツが出るとややこしい」
「そうこなくっちゃ」
そう、これだから嫌いなのだ。他人とかかわるのは。

水前寺と別れてから、家についてそのままの格好でベッドに飛び込む。
「あぁ、疲れた」
ただいまは言わない。
いや、言えない。
締め切ったカーテン。消えかかった蛍光灯。
二階建てのこの家に住居人は一人しかいない。大きすぎるこの家はただのしのぎ場程度の存在となっている。
静まり返った部屋には静かな寝息の音だけが聞こえていた。


けたたましいサイレンの音。
警察もレスキュー隊も本来ならかっこいいと思っていたけど、その日だけは違った。
そばにいる隊員の人が何を言っているのか、全く聞こえない。
粉塵が辺り一面を覆い、焦げた臭いが癇に障る。
火は止まることを知らず、すべてを焼き尽くす。
人が燃えている。人の限界を迎えた時の叫び声はもはや聞いていれるものではなかった。
傍には肉片が転がっている。
おそらく、形からして腕の部分だろう。足元にあるソレはこっちに対して伸ばしたようにも見えた。
煙が消えていく。そこには黒く焦げた二つの塊がこちらを仰いで倒れていた。
先ほどまで楽しく話し、手を繋いでいた親は何も語らない。
どうして、何も言ってくれない?はじめは何が何だか分からなかった。だが、いくら幼くても時間とともに状況が見えてくる。いや、幼いからこそ感というもの働いたのだろう。
“なぜ、この空間に自分しかいないのか”と。
そこからは自ずと理解し始めるだろう。
すべて理解し終えた頃には彼は泣き叫び続けた。
涙は涸れた。声も嗄れた。
そしてその日、坂上一誠という少年は枯れた。

俗にいうシーライフホテル爆破事件。
四〇二号室に設置された爆弾は四階全てを火の海に変えた。
犯人は須藤猛。過去に何度か未遂容疑で捕まっていたが、釈放。その一か月にこの事件が起きた。自己主張が激しく。犯行声明もその度に出していた。
しかし、今回だけは声明は出ておらず、警察のマークも甘かったことから犯行可能な状況になっていた。
警察の対応もかなり騒がれたが、それよりも話題となったのが、犯人が事件当日に連行されていく際に生き残った少年に対して、
「なぜ、お前だけ生き残った?」
と、笑いながら言い放ったことである。
ある者は犯人の異常性を、また、ある者は犯人の環境を洗い攫い取り上げ、話題は社会を震撼させた。
それもそのはず、犯人が他人でなく実の伯父だと誰が知り得ただろう。
あのセリフは生き残りに対してではなく、対象の息子が生き残ったことに対しての皮肉に他ならなかったのだから・・・。
それ以来、彼は人という存在を信じなくなった。裏切られることの怖さがあまりにも忘れなれないから。


寝起きは最悪だ。
「くそっ、またかよ」
時刻は六時半。
うなされていたのかびっしょりと濡れたシャツを脱ぎ棄て、シャワーを浴びる。
おそらく今日も寝不足になるのだろう。
テレビをつけてみる。
また、同じニュース。これで八人目となった。しかも、現場が隣町とかなり近くなってきている。
まぁ、用心に越したことはないだろう。痴漢撃退用のスプレーでも入れておくとしよう。

「なぁ、お前にスプレーぶっかけたい気分なんだけど、いいか?」
大学のキャンパス内、学生食堂はあぁという間に埋め尽くされていた。
せっかく勝ち取った席。でも前の二人がウザくて喜ぶ気にもなれない。
「香水ならいいよ」
「男もんだから無理だろ」
水前寺ともう一人の厄病神、大城賢人である。こいつらといると水前寺のファンクラブがうっとおしい。また、大城のあることないこと噂にするくせが俺のイメージをぶち壊す。
「そうそう、また出たらしいよ通り魔。それも今度は木下んちの近くだって」
「マジかよ。やべ、俺狙われるかも」
「なんでよ?」
「俺、有名人ぽいじゃん。なんとなく」
「えー、そりゃないでしょう。私ならともかく」
うざい。というか周りの目が痛い。
「お前らな」
何?と声を合わせる馬鹿二人。
「うるさいから黙ってろ」

それから二分も経たないうちに戻っていたのは言うまでもない。
相変わらず通り魔の話で盛り上がっている。
「俺、今度から夜遊びできねぇわ。早くつかまんないかね」
ネットには確かに九人目の被害者がでた。と書かれている。ここまできているというのにいまだ手がかりがあまり掴めていないというのは、もはや警察の対応などではなく犯人がかなり手慣れてきているのだろう。
「私はその点心配ないよ。一成が守ってくれるもん。ね?」
「えっ、何お前らそんな関係だったの?」
何が、ね?だ。また変な噂回るだろうが。
「馬鹿言え、ただの主従関係だ。水前寺が金を貢ぎ、俺が頂く、それ以外何もない」
そう言い残して席を立つ。これ以上いるとさすがに疲れる。
「えっ、主従関係だったんだ。うーんじゃあ・・・」
必死に脳にあるすべての知識をフル回転して何か考え込んでいる。
「なんだよ、つれないな。もう少しいようぜ。せっかく席が取れたんだしよ」
俺が取った席にお前らが来たと言ってやりたい。
「じゃあな、俺帰るわ」
「そうだ。いいこと思いついた」
お次は何だ?
「今から一成んち行こうよ」

「お前ら、ついてきても入れてやらないからな」
本当についてきやがった。
「だって、主従関係っていったら尽くす代わりに面倒を見なきゃいけないんでしょう?じゃあ付いて行っても問題ないじゃん」
なんでそうなる?
「じゃあ俺も主従関係になる」
「金以外認めん、あとお前が貢ぐだけだ。俺は一切の面倒を看ない」
「えー、じゃあ意味ないよ。って私たちの前に客みたい」
家の前には三人ほどカメラやらマイクを持った集団が来ていた。
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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:白雲まくら
会社員となり、日々ストレスとの戦い。
また、睡魔を相手に日々戦っております。






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