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3

「こんな絶望的な状況を打開する策はあるのか?てか、もちろんあるよな!」
「そう焦るな、加志やん。今、いい案が思いついた」
「今かよ!おい」
それでも危機的状況であることは変わらない。助かるならそれに賭けるしかない。
「いいか、加志やん。相手がアリスなんかを使っている時点で近くにいる可能性は低い。また、狙いはレリアだ。自動制御は対象を傷つかせかねないから、おそらく手動での遠隔操作だろう。そこで俺がレリアを連れて惹きつける間にEMCを範囲外で発動させてくれ、受信電波が遮断されたら停止してる間、俺が壊せる」
「あぁ、分かった」
永松がレリアを担ぐと、二人は分散して走り出す。

アリスが入るぎりぎりのラインでEMCを使うため後方から追う形になる。アリス自体は追跡するだけで特に攻撃する様子はない。なら、どちらにしても今がチャンスでもあるという訳だ。
「永松、EMCいくぞ!」
フルパフォーマンスの電波妨害が辺り一面を包む。
「よし、これで・・・なっ!」
それでもアリスは動いていた。効いていてもという訳でなく、満身創痍である。
「くそっ―――」
気がついた時にはもう遅い。鋼鉄の塊は永松に向い、辺り一面すべてを破壊した。
激音と共に通信用の回線が途切れる。と、同時に現れたのはアリス。レリアをアームで掴んだまま走りだす。成す術も無く連れ去られていくレリアをただ立ち尽くすしかなかった。


レーダーに映るのは、辺りの地図と無数の点。その中で唯一青に光る点が一際目立っていた。場所は古びた立体駐車場。もう使われてすらおらず、無法者と溜まり場となったデパートに隣接しているそこはただの空き地と化している。鋼鉄の蜘蛛と囚われの少女は屋上へと向かっていく。ただひたすらにそこで待っている者のために・・・。


八つ当たりしても仕方ないことは最初から分かっていた。
段ボール箱に入っていた。アイツを見つけた時からまだ一ヶ月も経っていない。それにこんな短期間でそこまで親しくなったわけでもない。この旧日本において人攫いなんて日常茶飯事だ。わざわざアリスに挑んで死に急ぐ必要もない訳だ。要はそこまでの関係だった。
だが、それは一般論だ。第十三区画の人間にとって、一緒にいた期間なんて関係ない。ましてや親しいだの命が危険なんて理由で逃げ出す奴なんていない。
内乱に負けた者が集い、これまで共に暮らしてきたこのエリアにおいて、一度でも会話を交わし共に笑った少女を見捨てるなど誰が許そうか。
弘一がいる倉庫に影が増え始める。男女関係なく係わった者からそうでない者まで、それは過去に新日本と闘っていた頃の軍隊そのもの。
そう、誰も知らない昔の話。内乱時、戦い続けた最後の砦。
「で、呼びかけたらこんなに集まりましたよ。どうする加志やん?」
何千何万という敵にたった百人で三日も耐え抜いた屈強の者達。
全てはただ一人の少女のために・・・。
「決まっている。俺についてこい。この町において、余所者が身内を攫うことがどういう目に遭うかて見せてやる。続け、我らが仲間の証をここに!」
歩み進むものに迷い無く、向うは戦場。
「はいよ。隊長」
彼らは歩き出す。すべてを取り戻すために・・・。


「よくやった、アリス」
白衣を着た中年の男がそこにいた。貪らしい雰囲気の格好で髭も伸びたい放題。伸ばそうというより、勝手に伸びたような感じである。小さめの丸い眼鏡がいかにも研究者というオーラを漂わせている。
旧駐車場に即席で作られた研究所はその男のテリトリーとして機能していた。前からそこに居座っていた者も金に目が眩み、今となっては居住者から用心棒へと成り下がっていた。
「もう逃げだすのはやめたまえ、もし同じことをすれば、今度は容赦なく周りの一般市民もアリスの餌食だ。わかったな?」
多分、逃げ出すなかったらこんなことにならなかったんだ。私が外の世界にさえ興味を持たなければ迷惑をかけることもなかった。
実験体として買われたんだ。もともと孤児院になんて預けられていない。捨て子だったらまだしも親は私を研究の道具として売った。だからその時から私には自由なんてなかった。きっとこれは関係のない人を巻き込んだ罰なんだ。
「もう少しだ。もう少ししたらお前は最高の兵器になるぞ」
だけどこんな私でももっと生きて、もっとみんなと笑いたかった。そんな願いも叶わないのだろうか。
「―きたい」
「はぁ、何て言った?」
「生きたいです。私はもっと生きていたい」
その言葉を聞いた途端、科学者の顔が引きつる。
「馬鹿言うんじゃねぇよ。兵器になる前から逆らってんじゃねぇ!」
「嫌です!私は人を傷つけたくなんかない。あなたなんて罰マークをいくら付けても足りないくらい嫌いです!」
もう耐えられないとばかりに科学者の血管が浮かび上がる。
もう、きっと助からない。けど最後くらいに抵抗したかったのだ。
「このアマが・・・」
と叫び手を挙げた瞬間、轟音と共に近くにあるドアが吹き飛んだ。
「お待たせしました。この加志弘一。そこにいる大食い娘を引き取りに来ました。というわけでとっとと返せこのハゲ眼鏡!」

突然の乱入者に特に驚くことも無く、研究者はつまらなそうに言い返す。
「何だね?君は。いや待てよ、加志だと?そうか」
性格が一変したように態度が変わる。
「そうか、お前。アイツ等の息子か!私は黒瀬(くろせ) 爾(みつる)。ははっ、私の研究所を破壊した革命軍のリーダーのガキとは今日は運がいい」
そう言って手を挙げると奥から聞き覚えのある機械音が聞こえてきた。
「一人で来たことは褒めてやる。だが、ここで終わりだ。役立たずの即席で雇った兵とは違うことくらい分かっているだろう?行け、アリス!そいつを蹴散らせ!!」
「あぁ、分かってるさ。だがそれも一人だったらの話だろう?」
迫ってくるは鋼鉄の蜘蛛。だがそれも周りから聞こえてきた激音と共に目前の敵に着く前に動きを止める。
自慢のフレームはガタガタに凹み、関節部はケーブルが剥き出しとなり、火花が飛んでいる。周りには大小様々な重火器を持った兵士たちが並んでいた。
「なっ、アリスが一瞬で・・・。くそっ、またか、またお前たちは俺から奪っていくのか?今の時代、研究者は資源不足のため発明もままならない。そんな中研究所も奪われ、アリスまで破壊して、研究材料まで取っていくのか!」
最早、今の彼に冷静さは残っていない。だが、その期待に応えるかのようにアリスが軋む体を持ち上げ再び動き出す。その場の全員が銃を構え直すが、加志はこれを制した。
「あれは自己再生機能付きだ。だから確実に止める」
右手に集まるは砂鉄の塊。形成するは槍。
「オッケー加志やん。コンビ結成三周年記念として派手にいかせていただきますよ!」
再び迫りくるアリスと飛び越えその背に取り付くと装甲が薄くなった頭部に槍を叩きつける。アンテナの用に突き刺さった槍に追撃の電撃が迫る。
「我らが愛と青春のセンチメンタルアタック!!」
馬鹿みたいな叫び声とは裏腹に放たれた電撃は槍を通してアリスの中を焦がしつくす。黒煙を上げ倒れこんだアリスは今度こそ起き上がれなくなった。

「そんなに貴様らは新日本の住民が憎いか、自分達のテリトリーに入られるのがそんなに嫌か?私はただ自分の好きな研究を続けていただけだ。それの何が悪い!」
手に握られた拳銃は震えている。必死に自分の思いを訴えるそんな黒瀬の言葉を加志は一蹴する。
「違うだろ、俺が責めるのはそんな理由じゃない―――」
右手にはネジやら使用用途の分からない部品がボクシングのグローブを形成するように集まってくる黒瀬の拳銃も磁力によってその手から奪われる。
「―――レリアを使わなきゃ出来ねぇ実験をするてめぇが気にくわないんだけだ!」
巨大な拳は黒瀬の頬に突き刺さる。渾身の一撃はその体を何メートルも飛ばし、動かなくなった黒幕とともに辺りからは勝利の雄叫びが響き渡った。


国内および国外の資源不足による発明の低下が問題視されてきている中、資源独占を狙った兵器開発。それこそが黒瀬の発明していたものだったらしい。
「今回のアリスを持ち込んだ旧日本地域への逃亡及び兵器開発にあたっては全面的に新日本地域における管理不足並びに国内干渉法の違法行為に当たるとして加志夫妻の早期釈放を約束しましょう」
黒瀬を拘束しにきた新日本の役人が言ったことに驚いが隠せない。
「親は死んだんじゃなかったのか?」
「いいえ、貴方の両親は内乱の指導者として現在も新日本第三刑務所にて刑期を全うしています」
「レリアに関しては―――」
と、話題がレリアに変わるとともに話を遮る。
「俺が預かる」
「しかし、それでは・・・」
「行くあてのないただのガキだろ、それとも何か知られたくないことでもあるのか?」
「いいえ、そのようなことはないです」
ぞろぞろと人が集まってくる。とその中の一人が皆に聞こえるような声で話しだす。
「ここはあれじゃねぇ、訴訟叔母ちゃんに出てもらうしかないよな。大きい事件からこれでも訴えるのか?という事件まで数々の裁判を受けることを得意とした国際干渉法のスペシャリストに」
その言葉を聞いた途端、役人が勘弁してくれとばかりの顔を見せた。おそらくはあちら側でも人気者なのだろう。
「分かりました。ですが、黒瀬に研究体と使われていたため調整のために一度こちらで預からせて頂きます」
永松の話だとあの時EMCを使うなと言ったのは研究時においての埋め込まれたチップなどにダメージを与えかねなかったからだそうだ。そんな厄介なものをレリアに残してはおけない。
「あぁ、じゃあレリアをよろしくお願いします」
そうして今回の事件は幕を閉じた。


一年後。
相変わらずこの街は変わらない活気であふれている。一年前より全体的にきれいになったと思うし、ドラム缶型の機械が走り回ったり、アスパ―に似た機械が手伝いをしている。たぶんあの人の発明だろう。
「すいません、人を探しているんですけど・・・」
近くにいる人に道を尋ねる。
「あぁ、ここは余所者が来るような場所じゃねぇよ。分かったらとっとと新日本地域へ帰りな」
確かに新日本から来たらよそ者扱いだ。それこそ邪魔者だろう。だが、邪魔そうに指の指す方向は旧日本地域のさらに奥の方である。
「ほら、行けよ。道は分かってんだろ?」
「ありがとうございます」

照れ笑いする。久しぶりに会うんだから真面目な顔をしなければいけないとは分かっていた。ここの人たちにいっぱい迷惑をかけたから本当は来ちゃいけないと思っていたのに、すれ違う人たちはただ指さしてくれる。道標のように、私が向かいたい先に導いてくれるかのように。

ようやく目当ての場所が見つかったけどどんな顔をして会えばいいか分からず、今さらになって壁に隠れて考え始める。と、聞きなれた声が聞こえてくる。
「アンタはやく降りてきなさいよ。もうすぐ予定時刻なんでしょう?」
「分かってます。相変わらず気が短いですよ。依里くん。そんなあなたにカルシウム」
「うっさいわねー。毎朝ちゃんと牛乳飲んでるわよ」
「おや、その割に育つところが育ってないような気がするのは私の気のせいでしょうかって、分かった!俺が悪かったからその物騒なライフルをどうか引っ込めて―!」
一年たったというのに全然変わってない。

「そろそろ出たら、みんな待ってるわよ」
と、後ろから声をかけられる。
「雫さん?」
「おっ、来た来た」
みんなも気付き始める。

「加志やん、また今日からフラグが増えますねー」
「やかましい、俺は雫さん一筋だ」
真っ赤な顔になりながら、「ふつつかものですが・・・」と雫さんの声がだんだん声が小さくなっていく。
「何バカなことやってんのよー!アンタらは!」
そんな二人のやり取りに飛び蹴りの突っ込みが入ってくる。
初めて会った時とそっくりだ。
じゃあここしかないとばかりに精一杯言葉を探して話を始める。
「えーっと、レリアと言います。御迷惑かと思いますが・・・」
と、途中で台詞を止められる。
「違うだろう?ほかに言い方がある筈だぜ、俺たちはそんなまどろっこしい関係じゃないだろうが」
そう言って満面の笑みを見せながら言う。

「お帰り、レリア」

どうしよう、こぼれてくる涙が止まらない。だけど言うことは分かっている。だからこそ精一杯笑い返して返すただこの言葉を

「ただいま」

二九九九年、今日から此処で始まる。
            私たちの新しい生活が。
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テーマ : オリジナル小説
ジャンル : 小説・文学

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2999年!!…っって、明らかに生きていないのでどうでもいい時ですね。あと900年以上先ですね。そういう先まで予想して小説書けるのはすごいですね~~と思います。どうも、初めましてです。LandMと申します。ファンタジー小説を書かせていただいております。よろしくお願いしますです。

LandM(才条 蓮) さん 返信

はじめまして、白雲まくらです。
コメントありがとうございます。
昔つるんでた仲間たちと御題を出しあって書いた短編です。なんともまぁどこから2999年が出てきたのかは覚えてませんが、読んでいただけて幸いです。900年後って温暖化で干乾びてそうですけどねw

これからもよろしくお願いします。

プロフィール

白雲まくら

Author:白雲まくら
会社員となり、日々ストレスとの戦い。
また、睡魔を相手に日々戦っております。






著作権に関しては、無断転載・無断転用についてはご遠慮ください。 


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